人と地球に誠実な仕事
【NPO支援】2008-02-12
有限会社パワーボール
〜社会的課題に取り組むNPO、彼らを支える市民、社会貢献活動を行う企業−みんなのチカラをひとつにする、フリーマガジン事業〜 有限会社パワーボール代表取締役 金 昌祐氏
有限会社パワーボールについて有限会社パワーボールは、戦争、紛争、自然災害、環境破壊、人権侵害、教育システム、少子・高齢化社会などの社会的課題に取り組むNPOと、そのNPOでボランティア活動をする/したい市民、NPOへの寄付や物品寄贈などの社会貢献活動を行う企業を結び付ける役割を果たすことをミッションに2005年6月に設立され、フリーマガジン事業を展開している会社である。
フリーマガジン『Power Ball』は、NPOの活動内容、企業の社会貢献活動、NPOでのボランティア活動報告、社会的なあるいはコミュニティに根差した店舗、などについて紹介する内容(24ページ)で、3万部を奇数月に発行している。
【POWER BALL最新号(vol.10)】
設置場所は、首都圏のイトーヨーカ堂店舗や書店、NPOや市民団体の事務所、県や市町村の市民活動関連センター、大学、専門学校、レストラン、オーガニックショップ、コミュニティ・カフェ、など(詳しい設置場所はhttp://www.power-ball.co.jp/distribution/# 参照)。
子どもの居場所、町おこし、第2の人生、食・農業、子育て中のお母さん、といった多様でかつ身近なテーマでの特集は反響が多く、地方自治体から設置に関する問合せ・リクエストが増えている。バックナンバーについては1冊200円で販売(2冊目以降は1冊100円)しているが、これを「まとめ買いしたい」とのリクエストもあり、高校や大学など、学習の場での補助教材等として使用されることもある。社会的事業を紹介するメディアが次々登場する中、社会貢献活動に焦点を当てたメディアとして、間もなく4年目を迎える。
読者ターゲットは、ボランティア活動やNPO支援のために使える時間・お金が比較的自由な、大学生・主婦・定年退職後あるいは定年の近い人々である。NPO活動や社会貢献活動に対して潜在的に関心はあるものの、一歩を踏み出せていない、または何をしたらいいのか分らない、という人々に、読み物として気軽に手に取ってもらうことでアプローチしている。荻原健司さんや、歌手Kiroroの金城綾乃さん、加藤登紀子さん、タレントの高樹沙耶さん、C.W.ニコルさんといった著名人が登場することも「まず手にとってもらう」一助となっている。
フリーマガジン事業としてのビジネスモデル主な収入は、企業広告である。年間契約という形をとっていないため毎号、広告出稿してもらうべく個別企業にアプローチしている。なお最新号(2008年1月号)にはユニ・チャーム株式会社、積水化学工業株式会社、東京電力株式会社、日本郵船株式会社より広告出稿を得ている。

バックナンバーの販売も行っているが、1冊あたりの価格200円は郵送料程度として価格設定されており、売り上げによる収益確保は意図されていない(バックナンバーはホームページからPDFファイルの形で無料ダウンロードすることもできる)。
【POWER BALL(バックナンバー)】
また「Power Balllサポーター」として、年会費を支払ってサポーターになってくれる人/組織を募集している(個人サポーター3,000円/年、団体・店舗サポーター30,000円/年、企業サポーター50,000円/年)。サポーターには雑誌を毎号郵送するほか、個人・団体・店舗・企業サポーターの情報を毎号の雑誌およびホームページに掲載している。
体制としては、金氏と社外取締役とで事業運営し、フリーライターやフリーカメラマンとのチーム体制により誌面制作を行っている。
金 昌祐氏へのインタビュー
Q.最近は社会的課題をビジネスで解決する、というソーシャル・ビジネスや社会的企業家という言葉をメディアで見かける機会が随分増えました。でも、パワーボールはソーシャル・ビジネスを対象としている訳ではなく、あくまで「社会貢献」を対象にしているのですね?「社会貢献」というとき、それは人の提供やモノ・金の寄付という無償での贈与という理解で良いのでしょうか…?
A.そうですね、日本ではNPOに対する理解や認知度がまだあまりにも低く、それゆえに寄付文化やボランティア活動も深く浸透していません。
アメリカでは一世帯当たり年間で20万円弱の寄付を行う一方、日本では一世帯当たり年間3,000円程度と言われています。アメリカの寄付額が多いのには大学や病院など、教育・医療機関へ多額の寄付がなされるという要因もあるのでしょうが、それにしても日本でのNPOに対する認識の低さが読める数字だと思います。大企業が社会貢献活動としてNPOとコラボレーションする場合でも、どこにどんなNPOがいて、今回の社会貢献の目的に沿ったNPOはどこなのか、選定に大変苦労するが故に、知名度も実績もある日本赤十字社やユニセフにリソースが集中してしまうという現象が起こるのですが、このような状態を打開したいのです。日本のNPOの活動内容を、NPOが抱える問題も含めて知ってもらいたい、と強く思っています。
市民(個人)と市民活動であるNPOと企業を結び付けるメディアとして、社会貢献活動に焦点を当てています。
Q.金さんはNPOに対する認知度向上というミッションをビジネスで達成しようとしていらっしゃる社会的企業家だと考えます。社会的企業家は起業するとき、自らのミッション達成に最も適した組織(会社/NPO/LLC/LLPなど)を選択すると思います。金さんはなぜ、会社を選択をなさったのですか?
A.
この事業がビジネスとして成立すると考えたからです。助成金や補助金に頼らずに、企業から広告収入を得て、ビジネスとして展開する。そして収益が上がった際には、会社のミッションに沿って他の事業に投資していくことも考えています。もちろん、大企業とお付き合いする上において、こちらも企業であるほうが、信用が得られやすいという利点もあります。
Q.雑誌販売ではなく、フリーマガジンという形をとったのはなぜですか?
A.『Power Ball』のような雑誌を買ってくれるのは、既にNPO活動や社会貢献活動に従事している人々になると思います。そのような人々だけでなく、NPO活動や社会貢献活動に対して潜在的に関心はあるものの、一歩を踏み出せていない、または何をしたらいいのか分らない、潜在的関心層にアプローチしたいのです。彼らにとって一歩を踏み出すためのフックになれば、と思いフリーマガジンというスタイルをとることにしました。
Q.起業までの想いや、ご自身のキャリアについても聞かせて頂けますか?
A.大学では経営学を学んでおり、実はその時は社会的課題に対する問題関心は無かったのです。大学の卒業旅行で訪れた中国で軽い肺炎になってしまい、自宅療養していた時、長野オリンピックの様子をテレビで見ていました。そこに映っていたのが最終聖火ランナーのクリス・ムーン氏でした。地雷撤去を行うNGOで活動している時に、右手・右足を失ってしまったムーン氏の走る姿を見て、氏の本を読み、それからというもの第3世界に対する興味が強くなりました。その後アメリカでMBAを取得、日本に帰国後はユニ・チャームでマーケティング業務に携わりましたが、担当していた赤ちゃん用の紙おむつを通しては第3世界であっても富裕層にしかアプローチできませんでした。よりダイレクトに第3世界に関わりたい、NPOで働きたい、という気持ちが強くなり、当時ウエブサイトで情報をいろいろ探したのですが情報があまりなく、それが『Power Ball』構想に繋がっていくこととなりました。
その後NPO法人ピース・ウインズ・ジャパンでのファンドレイズ事業や海外支援事業に従事する中で、自分のフィールドはNPOなのかビジネスなのかを熟慮し、結果としてビジネスであるという結論に達しました。
そして経営コンサルティング会社を経て有限会社パワーボールを立ち上げたのですが、友人知人からは「ミッションに共感するから出資はするけど、この事業はビジネスとしてはうまくいかないのでは」という指摘をもらったものです。でも広告収入やデザインについて、大企業の方への営業手法について、などアドバイス下さる方々のサポートを受けて、創刊に至ることが出来ました。
Q.今後の活動の展望を教えて下さい。
A.現在は作り手から読み手への一方的なアプローチになっていますので、ウエブサイトを活用して双方向のやりとりを実現したいと考えています。例えば、社会や環境に配慮された商品・サービスを『Power Ball』のホームページで販売します。お客様は他のECサイトのようにそれらの商品やサービスを購入できるのですが、『Power Ball』に登録しているNPOでボランティア活動をするとウェブ通貨がもらえ、それを購入費に充てられるような仕組みです。
最終的なゴールは、『Power Ball』がなくなることです。NPOの活動がよく知られるようになり、NPOでのボランティアや企業の社会貢献として様々なNPOと協働することが当たり前になる社会になれば、『Power Ball』は不要になりますからね。存続することが目標になってはいけません、ミッションが達成できたら組織は解散していいと思っています。
取材/執筆:(株)ソシオ エンジン・アソシエイツ 齊藤 紀子
フリーマガジン『Power Ball』は、NPOの活動内容、企業の社会貢献活動、NPOでのボランティア活動報告、社会的なあるいはコミュニティに根差した店舗、などについて紹介する内容(24ページ)で、3万部を奇数月に発行している。【POWER BALL最新号(vol.10)】
設置場所は、首都圏のイトーヨーカ堂店舗や書店、NPOや市民団体の事務所、県や市町村の市民活動関連センター、大学、専門学校、レストラン、オーガニックショップ、コミュニティ・カフェ、など(詳しい設置場所はhttp://www.power-ball.co.jp/distribution/# 参照)。
子どもの居場所、町おこし、第2の人生、食・農業、子育て中のお母さん、といった多様でかつ身近なテーマでの特集は反響が多く、地方自治体から設置に関する問合せ・リクエストが増えている。バックナンバーについては1冊200円で販売(2冊目以降は1冊100円)しているが、これを「まとめ買いしたい」とのリクエストもあり、高校や大学など、学習の場での補助教材等として使用されることもある。社会的事業を紹介するメディアが次々登場する中、社会貢献活動に焦点を当てたメディアとして、間もなく4年目を迎える。
読者ターゲットは、ボランティア活動やNPO支援のために使える時間・お金が比較的自由な、大学生・主婦・定年退職後あるいは定年の近い人々である。NPO活動や社会貢献活動に対して潜在的に関心はあるものの、一歩を踏み出せていない、または何をしたらいいのか分らない、という人々に、読み物として気軽に手に取ってもらうことでアプローチしている。荻原健司さんや、歌手Kiroroの金城綾乃さん、加藤登紀子さん、タレントの高樹沙耶さん、C.W.ニコルさんといった著名人が登場することも「まず手にとってもらう」一助となっている。
フリーマガジン事業としてのビジネスモデル主な収入は、企業広告である。年間契約という形をとっていないため毎号、広告出稿してもらうべく個別企業にアプローチしている。なお最新号(2008年1月号)にはユニ・チャーム株式会社、積水化学工業株式会社、東京電力株式会社、日本郵船株式会社より広告出稿を得ている。

バックナンバーの販売も行っているが、1冊あたりの価格200円は郵送料程度として価格設定されており、売り上げによる収益確保は意図されていない(バックナンバーはホームページからPDFファイルの形で無料ダウンロードすることもできる)。
【POWER BALL(バックナンバー)】
また「Power Balllサポーター」として、年会費を支払ってサポーターになってくれる人/組織を募集している(個人サポーター3,000円/年、団体・店舗サポーター30,000円/年、企業サポーター50,000円/年)。サポーターには雑誌を毎号郵送するほか、個人・団体・店舗・企業サポーターの情報を毎号の雑誌およびホームページに掲載している。
体制としては、金氏と社外取締役とで事業運営し、フリーライターやフリーカメラマンとのチーム体制により誌面制作を行っている。
金 昌祐氏へのインタビュー
Q.最近は社会的課題をビジネスで解決する、というソーシャル・ビジネスや社会的企業家という言葉をメディアで見かける機会が随分増えました。でも、パワーボールはソーシャル・ビジネスを対象としている訳ではなく、あくまで「社会貢献」を対象にしているのですね?「社会貢献」というとき、それは人の提供やモノ・金の寄付という無償での贈与という理解で良いのでしょうか…?A.そうですね、日本ではNPOに対する理解や認知度がまだあまりにも低く、それゆえに寄付文化やボランティア活動も深く浸透していません。
アメリカでは一世帯当たり年間で20万円弱の寄付を行う一方、日本では一世帯当たり年間3,000円程度と言われています。アメリカの寄付額が多いのには大学や病院など、教育・医療機関へ多額の寄付がなされるという要因もあるのでしょうが、それにしても日本でのNPOに対する認識の低さが読める数字だと思います。大企業が社会貢献活動としてNPOとコラボレーションする場合でも、どこにどんなNPOがいて、今回の社会貢献の目的に沿ったNPOはどこなのか、選定に大変苦労するが故に、知名度も実績もある日本赤十字社やユニセフにリソースが集中してしまうという現象が起こるのですが、このような状態を打開したいのです。日本のNPOの活動内容を、NPOが抱える問題も含めて知ってもらいたい、と強く思っています。
市民(個人)と市民活動であるNPOと企業を結び付けるメディアとして、社会貢献活動に焦点を当てています。
Q.金さんはNPOに対する認知度向上というミッションをビジネスで達成しようとしていらっしゃる社会的企業家だと考えます。社会的企業家は起業するとき、自らのミッション達成に最も適した組織(会社/NPO/LLC/LLPなど)を選択すると思います。金さんはなぜ、会社を選択をなさったのですか?
A.
この事業がビジネスとして成立すると考えたからです。助成金や補助金に頼らずに、企業から広告収入を得て、ビジネスとして展開する。そして収益が上がった際には、会社のミッションに沿って他の事業に投資していくことも考えています。もちろん、大企業とお付き合いする上において、こちらも企業であるほうが、信用が得られやすいという利点もあります。
Q.雑誌販売ではなく、フリーマガジンという形をとったのはなぜですか?
A.『Power Ball』のような雑誌を買ってくれるのは、既にNPO活動や社会貢献活動に従事している人々になると思います。そのような人々だけでなく、NPO活動や社会貢献活動に対して潜在的に関心はあるものの、一歩を踏み出せていない、または何をしたらいいのか分らない、潜在的関心層にアプローチしたいのです。彼らにとって一歩を踏み出すためのフックになれば、と思いフリーマガジンというスタイルをとることにしました。
Q.起業までの想いや、ご自身のキャリアについても聞かせて頂けますか?
A.大学では経営学を学んでおり、実はその時は社会的課題に対する問題関心は無かったのです。大学の卒業旅行で訪れた中国で軽い肺炎になってしまい、自宅療養していた時、長野オリンピックの様子をテレビで見ていました。そこに映っていたのが最終聖火ランナーのクリス・ムーン氏でした。地雷撤去を行うNGOで活動している時に、右手・右足を失ってしまったムーン氏の走る姿を見て、氏の本を読み、それからというもの第3世界に対する興味が強くなりました。その後アメリカでMBAを取得、日本に帰国後はユニ・チャームでマーケティング業務に携わりましたが、担当していた赤ちゃん用の紙おむつを通しては第3世界であっても富裕層にしかアプローチできませんでした。よりダイレクトに第3世界に関わりたい、NPOで働きたい、という気持ちが強くなり、当時ウエブサイトで情報をいろいろ探したのですが情報があまりなく、それが『Power Ball』構想に繋がっていくこととなりました。
その後NPO法人ピース・ウインズ・ジャパンでのファンドレイズ事業や海外支援事業に従事する中で、自分のフィールドはNPOなのかビジネスなのかを熟慮し、結果としてビジネスであるという結論に達しました。
そして経営コンサルティング会社を経て有限会社パワーボールを立ち上げたのですが、友人知人からは「ミッションに共感するから出資はするけど、この事業はビジネスとしてはうまくいかないのでは」という指摘をもらったものです。でも広告収入やデザインについて、大企業の方への営業手法について、などアドバイス下さる方々のサポートを受けて、創刊に至ることが出来ました。
Q.今後の活動の展望を教えて下さい。
A.現在は作り手から読み手への一方的なアプローチになっていますので、ウエブサイトを活用して双方向のやりとりを実現したいと考えています。例えば、社会や環境に配慮された商品・サービスを『Power Ball』のホームページで販売します。お客様は他のECサイトのようにそれらの商品やサービスを購入できるのですが、『Power Ball』に登録しているNPOでボランティア活動をするとウェブ通貨がもらえ、それを購入費に充てられるような仕組みです。
最終的なゴールは、『Power Ball』がなくなることです。NPOの活動がよく知られるようになり、NPOでのボランティアや企業の社会貢献として様々なNPOと協働することが当たり前になる社会になれば、『Power Ball』は不要になりますからね。存続することが目標になってはいけません、ミッションが達成できたら組織は解散していいと思っています。
取材/執筆:(株)ソシオ エンジン・アソシエイツ 齊藤 紀子
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